会長挨拶

会長この度、日本ユーイング肉腫研究グループ:Japan Ewing Sarcoma Study Group (JESS)のグループ代表者を拝命いたしました大分大学医学部先進医療科学科の田仲和宏です。前任の岡山大学整形外科教授 尾﨑敏文先生からしっかりとバトンを受け継ぎ、JESSをなお一層発展させていけるよう精一杯努力したいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

ユーイング肉腫は小児・若年者で2番目に多い原発性悪性骨腫瘍です。疾患特異的な染色体転座および融合遺伝子が知られていますが、同一の遺伝子異常を呈する腫瘍は全身の軟部組織にも発生します。最新のWHO分類2020では、骨腫瘍・軟部腫瘍から独立した新たなカテゴリー「骨軟部組織発生未分化小円形細胞肉腫」が設けられており、ユーイング肉腫はその中に分類されました。

以前は我が国のユーイング肉腫の治療成績は欧米に比較して不良でしたが、診療ガイドラインの整備等により適切な治療が広まることで改善されてきました。ユーイング肉腫の標準治療は、手術、化学療法、放射線治療を組み合わせた集学的治療です。従って、ユーイング肉腫の治療成績の向上のためには、小児科医、整形外科医、放射線科医、腫瘍内科医など多分野の専門家の連携を推進・強化することが重要です。また、治療後も長期にわたり晩期副作用、再発や転移のサーベイランス、二次癌の問題にも十分留意する必要があります。

私たちJESSは、ユーイング肉腫の治療成績の更なる向上を目的に2003年に設立されました。現在全国の64専門施設から200名近い多分野の専門家がJESSに参加し、より良い治療の開発のため多施設共同臨床試験を行っています。これまでに実施した第II相試験JESS-04では、5剤の抗がん剤による強力な化学療法を含めた集学的治療により、欧米と遜色ない優れた治療成績を達成することができました。続くJESS-14試験では、治療インターバルの短縮により更なる成績改善を目指していますが、既に患者登録が終了し追跡中であり、結果が待たれているところです。

JESSでは、上記の試験以外にもより良い治療の開発に繋がる臨床試験、附随研究を計画しており、今後もグループ一丸となってユーイング肉腫の研究に取り組んで参ります。皆さまのご理解、ご支援をよろしくお願い申し上げます。

大分大学医学部先進医療科学科 教授
田仲和宏