治療・予後

治療

1 .化学療法:

ESFT は高い放射線感受性を有する腫瘍で、放射線治療は化学療法導入以前から標準治療でした。放射線治療単独では手術もしくは手術と放射線を組み合わせた治療に比べて局所再発率が高いと報告され、1980年代後半より積極的に外科治療が行われるようになりました。現在では、可能な限り原発巣の外科的切除を行い、切除縁や組織学的奏効割合に応じて最適な放射線治療を行うのが標準的な腫瘍の局所コントロール方針です。また、診断時に遠隔転移がなくても、微小転移を有していること多く、放射線治療と外科治療を組み合わせた局所療法に全身化学療法を併用した集学的治療の導入により生存率が大幅に改善してきました。現在、転移のない限局性ESFTでは5~6コースの術前化学療法の後に、外科治療を行い、組織学的反応性が不良、もしくは摘出時に十分な切除縁を確保できなかった場合は放射線治療を追加し、術後化学療法を8~11コース行う治療が標準的です。

ESFTに有効性が高い薬剤は、ビンクリスチン(VCR)、ドキソルビシン(DXR=アドリアマイシン:ADR)、シクロホスファミド(CPA)、イホスファミド(IFM)、エトポシド(VP-16)、アクチノマイシンD(Act-D)の6剤です。限局性ESFTには米国ならびに本邦ではVDC療法(VCR+DXR+CPA)とIE療法(IFM+VP-16)の交替療法が、欧州ではVAIA療法(VCR+Act-D+IFM+ADR)が標準的化学療法に位置付けられております。

一方で、転移性ESFTに対しては、標準的な治療は確立しておらず、強化した化学療法や大量化学療法を行ってもなかなか治療成績が改善していません。

2.手術療法

ユーイング肉腫 は放射線感受性が高い腫瘍で、歴史的には局所治療として放射線治療が第1選択とされていました。しかし、放射線治療単独では手術もしくは手術と放射線を組み合わせた治療に比べて局所再発率が高いという報告がなされるようになり、近年では積極的に外科的な腫瘍切除が行われるようになりました。切除時には、腫瘍からある程度の厚さの正常組織を介した、適切な切除縁での切除が理想とされています。体幹部発生の巨大腫瘍や頭頚部原発腫瘍などを除いては、可能な限り外科的切除を行い、切除縁や組織学的奏効割合に応じて最適な放射線治療を行うのが標準的な局所コントロール方針です。

治療後は、遠隔転移や2次がん発生などの検出のほかに、外科的には局所再発の検出、人工関節などのインプラントの緩みや感染に対する対応、そして脚長差に対する対応などが重要となってきます。有効かつ安全な化学療法レジメンを開発するのみでなく、手術や放射線治療を含む集学的治療を最適化して効率的に行うため、多分野の専門家による連携を強めて局所治療も行うことが重要です。

3.放射線治療

1)はじめに
Ewing肉腫は全身のさまざまな部位に発生しますが、放射線治療がよく効くタイプの肉腫であり、手術や薬物療法とともに治療の3本の大きな柱のひとつとなっています。腫瘍が存在する臓器の機能や形を保ちつつ病巣を治療することができるという大きな利点があり、根治する治療としてだけでなく、病巣による痛みなどの症状緩和まで、治療の様々な場面で幅広く活用されています。
2)放射線治療方法の選択
治療装置で発生させた放射線を体の外から照射する外部照射とよばれる放射線治療方法が使用されます。直線加速器(リニアック)とよばれる装置から出るX線や電子線が使用されることが多く、癌治療を行う多くの施設で実施可能です。外照射を行う特殊な治療に陽子線(小児がんが保険診療の対象)や重粒子線(骨軟部腫瘍が保険診療の対象)などの粒子線治療があります。粒子線治療はブラッグピークという物理学的な特性を利用して病巣に集中的な放射線治療が可能です。X線治療と粒子線治療の使い分けは、病巣の部位や大きさ、広がりにより放射線腫瘍医が決定します。組織や細胞に与える影響について、重粒子線はX線の約3倍を示しますが、陽子線治療はX線とほぼ同じと考えられています。
3)放射線治療の特徴
放射線治療は、手術が腫瘍とその発生した臓器を周囲の正常組織を含めて切除するのに対し、放射線治療では正常組織を含めた臓器を残して治療できるため、形態や臓器の機能を温存できます。
放射線治療の副作用には治療中~直後に出現するタイプと時間がたって出現するタイプがあります。二次がんのリスクがあることも問題点です。
正常組織への影響を最低限にするための工夫は、最近の放射線治療の最大の進歩です。より適切な放射線量で病巣周囲の治療が必要な範囲に集中して照射する、新しく高度な放射線治療が行われることで隣接する正常組織への影響を最小限にすることができるようになっています。三次元原体照射 (3DCRT) や強度変調放射線治療(IMRT)、粒子線治療などいろいろな方法より、病巣の広がりや部位などを考慮して適切な方法を選択します。
arrow

予後:

限局性ESFTの5年無病生存率は60~70%と報告されています。
転移性ESFTの3年無病生存率は20~30%程度です。