歴史

治療の歴史

近年のESFTに対する治療成績の改善は、化学療法の進歩によることが大きい。明らかな限局例でも、診断時には微小転移をしている可能性が高いので、放射線治療や外科治療などの局所治療と同様に全身治療としての化学療法が重要である。

1)限局例

 1960年代に入り、シクロホスファミド(CPA)の有効性が報告され、その後、アクチノマイシン(ACD)、ビンクリスチン(VCR)、ドキソルビシン( DXR )、イホスファミド(IFM)の有効性に関して報告された。現在、ESFT に対して有効性が高い抗がん剤は、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、イホスファミド、エトポシド(VP-16)、アクチノマイシンの6剤である。

(1)米国での治療の歴史

 米国で1973 年に始まったIntergroup Ewing Sarcoma Study(IESS)によるIESS-I では、ビンクリスチン、アクチノマイシン 、シクロホスファミド、ドキソルビシン (VAC+ドキソルビシン)の有効性が報告された。つづく1978年IESS-II では、限局例に対し従来型VAC+ドキソルビシンとドキソルビシンを増量したVAC+ドキソルビシンでの比較試験が行われ、ドキソルビシン増量の有効性が示された。

 1988年、NCI研究INT-0091(CCG-7881 / POG-8850)では、ビンクリスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド(VDC)とイホスファミドとエトポシド(IE)の交替療法とVDC 単独療法の前方視的ランダム化比較試験が行われた。結果は、遠隔転移例ではVDC+IE 群とVDC群とで成績に差はなかったが、限局例ではVDC+IE 群で有意に成績が良かった。

従って、以降、米国では、このVDC-IEの交代療法が標準的治療となった。この標準治療とVDC、IEのアルキル化剤の1回投与量を増量し、治療期間を短くした治療と比較検討したが、有意差は認められなく、アルキル化剤の1回投与量を増量しても無効なことが明らかとなった。

この標準治療とG-CSFを併用し2週間隔で治療を行ったAEWS0031研究の比較では、18 歳以下でG-CSFを併用し2週間隔の治療を行った方が成績の改善を認めている。

(2)欧州での治療の歴史

 欧州での大規模な臨床研究は、Cooperative Ewing’s Sarcoma Study Group (CESS)により1986年より1991 年までCESS-86が行われた。腫瘍量が100ml以上または、体幹に発症した症例を高リスク(HR)(n=241)とし、四肢発症例は標準リスク(SR)(n=52)とした。(SR)の限局例にビンクリスチン, アクチノマイシン,シクロホスファミド, ドキソルビシン (VACA)療法、HRの限局例にビンクリスチン, アクチノマイシン,イホスファミ , ドキソルビシン (VAIA)療法を3 週毎に12 コースを行い、(VACA)療法、(VAIA)療法の有用性を報告した。

 190年代にCESSとUKCCSG/MRCが統一され、European Intergroup Cooperative Ewing’s Sarcoma Study Group (EICESS)-92臨床研究が行われた。四肢原発で腫瘍量が100ml以下をSR、体幹原発か腫瘍量が100ml以上をHRとしてリスク分類を行い、SR 群VAIAビンクリスチン、アクチノマイシン、シクロホスファミド 、ドキソルビシン(VACA)とに振り分け、HR群をVAIAとエトポシド, ビンクリスチン, アクチノマイシン, イホスファミド , ドキソルビシン (EVAIA)とに振り分け、それぞれを比較検討した。SRのVAIA群とVACA群の5年無病生存率は有意差を認めなかった。一方、転移を認めないHR群でVAIAにエトポシドを加えることにより生存率が上昇することが証明された。

 2001年から米国、欧州との大規模共同臨床研究EURO-E.W.I.N.G.92が、限局例、転移例を含め多剤併用化学療法としてVIDE(VCR,IFM, DXR,VP-16)を6コース施行後、リスクにより治療法を層別化し、さらに2つの治療アームに分け造血幹細胞移植を含めた比較試験が行われた。

 同様に、本邦でもVDC-IEを基本にした「限局性ユーイング肉腫ファミリー腫瘍に対する第Ⅱ相臨床試験」の前向き臨床試験が終了している。

 2004年12月から2008年5月末で53例の登録が完了した。2011年6月に最終解析を行った。53 例の内6例は診断違い、1例は転移例であった。年齢は中央値15歳であった。解析可能な46例中36例が治療を完了、5例がPDで治療中止、その他の理由で5例が治療中止した。24例に手術が行われ、この内5例(20%)が施設での切除縁の修正が必要だった。治療完了した36例中11例が再発した。局所再発例では、治癒切除が行われ、放射線照射を施行しなかった17例中1例が局所再発、1例が局所・転移再発した。切除不能例に放射線照射を行った17 例中3例が局所再発した。2例が、治療終了後1年目に治療関連性白血病を発症し1例は骨肉腫を発症した。最終解析3年無病生存率は、71.7%で、5年無病生存率は69.6%であった。

米国 1973年 IESSⅠ(Intergroup Ewing Sarcoma Study)
1978年 IESSⅡ
1988年 NCIプロトコールINT-0091(CCG-7881/POG-8850)(VDC-IE)
2001年 AEWS0031 (VDC-IE:interval-compressed, COG)
欧州 1981年 CESS 81 (Cooperative Ewing’s Sarcoma Study )
1986年 CESS 86
1992年 EICESS 92
( European Intergroup Cooperative Ewing’s Sarcoma Study)
1998年 Euro-E.W.I.N.G 99

2)転移例

 転移例に対する満足すべき結果を得るような標準的治療は報告されていない。VDC療法 とIE療法、または、VAIA療法 に外科治療、放射線治療を行う集学的治療を行うと、一時的に完全寛解か部分寛解にいたるが、全生存率は20%前後にとどまる15)。

 NCIでは、VDCとIE の交替療法とVDC単独療法の前方視的ランダム化比較試験を遠隔転移例 120人に対して施行した。5年無病生存率(EFS)が22%とほぼ同様な結果でVDC,IE交替療法とVDC単独療法との間には有意な差はなかった。

 メモリアル・スローンケタリングがんセンターで36例にアルキル化剤シクロフォスファミドの用量を増量した治療プロトコールを用いた。原発部位に対する治療反応性は良好であったが、全身転移例では予後の改善は得られなかった。Miser等は、転移例60例に対し、標準的なVDC-IE投与量にドキソルビシン、シクロフォスファミドを増量したが、増量したことにより、7%に治療関連死を認め、9%に二次がんを発症した。標準治療と比較し無効であった。

 EICESS92臨床研究では、HR群をVAIAと EVAIAに振り分け、HR群で、さらに転移の有無で分類し、転移例ではEVAIAの有効性は証明できなかった。以上より、転移例に対しての有効な化学療法は確立しておらず、限局例に対する標準治療を用いること多い。

 一方、造血幹細胞移植併用大量化学療法でも、いまだ有効との報告はみられてない。

Meta EICESS研究において36 名の進行例に対しTandem メルファラン/エトポシド (Tandem ME)とHyperメルファラン/エトポシド/TBI(Hyper ME)の自家移植と同種移植を行い比較検討されたがTandem ME ASCTの有効性は証明できなかった。またTBI併用レジメンおいて治療関連死が多かった。

最近、Oberlin等は、75例の転移例に対し移植前処置に大量ブスルファンにメルファランを併用したASCTの成績を報告した。5年無病生存率(EFS)は47%であった。肺のみ転移の44例は52%、骨のみ転移の22例は36%であった。骨髄転移のあった23例のうち生存例は1例のみであった。このことから、肺のみ、または、骨のみの転移であれば、大量化学療法は有効と考えられると報告している。

以上より、転移例に対する造血幹細胞移植併用大量化学療法に関する成績は、2〜5年EFSは20〜30%程度で、いまだに予後は不良である。肺のみ、または、骨のみの転移であれば、大量化学療法は有効であるという報告もあるが、まだ十分な症例数の集積はない。