Q&A

Q1:ユーイング肉腫って、どのような病気ですか?
A1:ユーイング肉腫は、今から約100年前頃に明らかになった病気です。全身の骨や骨以外にも発生します。小児がん全体の骨腫瘍は、約5%を占めて骨肉腫に次いで多い小児がんです。発症年齢は、12〜15歳前後に多く発症します。発症部位は、骨原発の場合は、骨盤が最も多く、ついで、大腿(16%)、下肢(12%)、上肢(8%)、背骨などです。
病巣が限局している例が、約75%、病巣が一つではなく他の部位に転移している例は、25%程度です。
明らかな人種差を認め、圧倒的に白人系に多く、アジア人系、アフリカ人系には少ないです。日本では、全体で、約100名程度の発症数です。
Q2:ユーイング肉腫とユーイング肉腫ファミリー腫瘍とは、同じ病気ですか?
A2:医学が進歩することにより遺伝子検査が行われるようになり、Q1で説明しましたユーイング肉腫と末梢性神経外胚葉性腫瘍(peripheral primitive neuroectodermal tumor, PNET)、胸壁アスキン腫瘍(Askin tumor)は、同一の遺伝子異常を持つことから同様の疾患である事が明らかとなりました。これら3疾患は、まとめてユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)と呼ばれています。
Q3:どのような症状がありますか?
A3: 症状は、痛みや腫脹を認めます。病変部の間欠的な痛みから始まり、夜間などに次第に強くなり、腫瘤として触れるようになります。しばしば、症状が痛みだけのこともあり、成長痛やスポーツによる外傷と間違えられることもあります。発熱を伴うこともあり骨髄炎や腱鞘炎と診断されることもあります。病的骨折を伴うこともあります。
Q4:診断はどのようにされますか?
A.4:血液検査では、ESFTと診断できる特異的マーカー等はありません。症状が増悪すると、血清LDH高値、中等度貧血、白血球増多や血沈亢進などの非特異的な異常を認めます。
画像検査では、単純エックス線、CT (Computer tomography)やMRI (magnetic resonance imaging) などの検査を行い確認します。転移巣の検索では、肺転移にはCT、骨転移には、骨シンチグラフィー(放射線検査)やPET が行われます。最終診断には生検(病巣の組織検査)は必須です。正確な病理診断のためには、分子生物学的検査も行うために、針生検よりも十分に検体が採取できる切開生検の方が良いです。
Q5:どのような治療行いますか?
A5:この疾患は、抗がん剤(化学療法)、放射線治療に非常に反応しやすい腫瘍です。化学療法、放射線治療、外科治療を組み合わせた集学的治療が行われます。一般的に診断のための生検(Q4)を行い診断後に治療を行います。ユーイング肉腫は、病巣が一カ所でも全身に腫瘍細胞が散らばっていると考え、化学療法を先行させます。その後、病巣が縮小し、手術が可能になれば手術を行い、手術が不可能な場所では、放射線治療を先行させて、可能であれば手術を行います。手術、放射線治療後も数ヶ月間化学療法を行います。
Q6:放射線治療には、どのような治療法がありますか?
A6:治療装置で発生させた放射線を体の外から照射する外部照射とよばれる放射線治療方法が使用されます。直線加速器(リニアック)とよばれる装置から出るX線や電子線が使用されることが多く、癌治療を行う多くの施設で実施可能です。外照射を行う特殊な治療に陽子線(小児がんが保険診療の対象)や重粒子線(骨軟部腫瘍が保険診療の対象)などの粒子線治療があります。粒子線治療はブラッグピークという物理学的な特性を利用して病巣に集中的な放射線治療が可能です。X線治療と粒子線治療の使い分けは、病巣の部位や大きさ、広がりにより放射線腫瘍医が決定します。組織や細胞に与える影響について、重粒子線はX線の約3倍を示しますが、陽子線治療はX線とほぼ同じと考えられています。
Q7:治療の副作用には、どのようものがありますか?
A7:化学療法、放射線治療、手術療法では、それぞれの治療による副作用は認められます。治療中に症状を認める場合や、数ヶ月、数年してから発症する晩期合併症があります。しかし、最近では、それぞれの副作用を軽減するような治療法の工夫が行われてきています。また、担当医からは、その都度、副作用に関しては説明があると思いますのでお聞きになってください。
Q8:治療の期間はどのくらいかかりますか?
A8:限局例では、入院してから化学療法、放射線療法、手術療法の集学的治療を行うには、9〜10ヶ月程度必要です。転移例ですともう少し時間が必要になります。ただ、ずーと入院している必要は無く、病状が落ち着いてくれば、化学療法のサイクルとサイクルの間に自宅への数日の外泊も可能です。
Q9:臨床研究試験は参加した方が良いですか?
A9:日本では、小児がんの発症数が少ないため、なかなかこのような臨床研究試験は進みません。このユーイング肉腫研究グループ(JESS)では、約10年前に臨床研究試験を行い限局例ユーイング肉腫治療研究JESS04では、欧米並みの治療結果を得ることが出来ました。現在、JESSでは、新たなJESS14という限局例治療研究を開始しております。JESS04よりもさらに良い治療を目指し、安全性を十分に考慮し、治療成績の向上を考え、副作用を軽減する様に作成されました。担当医から利益、不利益の十分な説明を受けていただき、ご自分の意志で、決めていただければと思います。
Q10:治療費は、どのくらいかかりますか。
A10:小児がんには、さまざまな医療費の助成があります。まず、一般の方々も利用できる子ども(乳幼児)医療費助成で、0歳から15歳(中学校卒業)までが対象となります。保険診療の自己負担分が全額、または一部を助成する制度です。各自治体で多少異なります。小児慢性特定疾患医療費助成は、発症が18歳未満まで(更新は20歳まで可)自己負担額は原則2割負担。所得によって異なります。高額療養費限度額適用認定証で、あらかじめ手続きをすることで窓口での支払いが自己負担限度額だけになる制度です。また医療費控除は、1年間(1/1〜12/31)に支払った医療費が10万円を超える場合など受けられます。その他に手当金として特別児童扶養手当や障害児福祉手当、児童育成手当などがありますので、病院の医療相談室やソシアルワーカーの方と相談してみたらいかがでしょうか。出来るだけ早く手続き等を行った方が良いかと思います。