臨床研究

臨床研究とは

人を対象として行われる医学研究のことで、病気の予防・診断・治療方法の改善や病気の原因の解明、患者さんの生活の質の向上などを目的として行われます。実際の医療に活用できる確かな情報とするため、患者さんにご協力いただいて行われます。臨床研究のうち薬剤、治療法、診断法、予防法などの安全性と有効性を評価することを目的としたものを臨床試験といいます。また、臨床試験のうち、新しい薬や医療機器の製造販売の承認を国に得るために行われるものを治験と呼びます。

小児固形腫瘍観察研究

「小児固形腫瘍観察研究」は、日本病理学会と日本小児がん研究グループ(JCCG)が協力し、全ての固形腫瘍のお子さんを対象として行っている観察研究です。内容は腫瘍組織の一部を中央診断に提出し、その結果やフォローアップを含めた臨床情報を小児固形腫瘍観察研究にご提供いただくこと、また、腫瘍の病態を解明する研究に使用するために、中央診断の後の余りや放射線画像を保存させていただくこと、小児がんに関連した研究をより幅広く行えるようにするため、中央診断の余りとは別に公的なバイオバンクに腫瘍と正常の検体をご提供いただくこと、の3点に集約化されます。その結果、正確な病理ならびに分子学的診断の提供、提供いただいた検体を使用した研究から、新しい治療の可能性や、病態の正確なメカニズム、予後因子の解析などの研究が進むものと期待されます。

JESS04の結果

2004年12月から2008年5月末で、予定した53例の登録が完了した。2011年6月に最終解析を行った。53 例の内6例は診断違い、1例は転移例であった。19例にキメラ遺伝子の検索が行われ、10例にEWS-FLI1、5例にEWS-ERGが検出された。年齢は中央値15歳であった。解析可能な46例中36例が治療を完了、5例がPDで治療中止、その他の理由で5例が治療中止した。24例に手術が行われ、この内5例(20%)が施設での切除縁の修正が必要だった。治療完了した36例中11例が再発した。局所再発例では、治癒切除が行われ、放射線照射を施行しなかった17例中1例が局所再発、1例が局所・転移再発した。切除不能例に放射線照射を行った17 例中3例が局所再発した。2例が治療終了後1年目に治療関連性白血病を発症した。最終解析3年無病生存率は、71.7%で、5年無病生存率は69.6%であった。

本邦で初めてのESFTに対する前向き第Ⅱ相臨床試験が終了し、治療関連死は認めず、遂行可能な治療プロトコールであった。関連各科の連携が重要と考えられた。今後、本プロトコールの問題点を検討し、次期の限局性、転移性プロトコールの検討を行う予定である。

JESS14試験(限局性ユーイング肉腫ファミリー腫瘍に対するG-CSF併用治療期間短縮VDC-IE療法を用いた集学的治療の第Ⅱ相臨床試験)

ESFTに有効性が高い薬剤は、ビンクリスチン(VCR)、ドキソルビシン(DXR=アドリアマイシン:ADR)、シクロホスファミド(CPA)、イホスファミド(IFM)、エトポシド(VP-16)、アクチノマイシンD(Act-D)の6剤である。限局性ESFTには米国ならびに本邦ではVDC療法(VCR+DXR+CPA)とIE療法(IFM+VP-16)の交替療法が標準的化学療法に位置付けられており、5年無病生存率は60~70%です。

VDC-IE療法はもともと3週間隔で行われる治療でありましたが、米国COG AEWS0031試験において、1回に投与する薬剤量を増やすのではなく、治療間隔を短縮し薬剤密度を高めることで、治療効果が改善するかどうか検証するために、G-CSF併用下に治療間隔を2週間に短縮した治療間隔短縮VDC-IE群とVDC-IE標準群(3週間隔)との比較試験が行われました。限局性ESFTに対しては5年無病生存率で73% vs 65% (p=0.048)と有意差をもって治療間隔短縮VDC-IE群の成績が良好であることが示されました。

日本でも2004年から限局性ESFTに対して3週間隔のVDC-IE療法を用い、統一された局所療法(外科治療+放射線治療)方針にて行う集学的治療の臨床試験(JESS04試験)が行われました。そこで、米国とほぼ同等の治療成績が得られたため、2週間隔の治療期間短縮VDC-IE療法を用いた臨床研究を2016年2月より開始しました。